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2025年2月23日 (日)

旅は続く

  

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2009年ですから、16年前ですか。

教育委員会向けの原稿です。

今も変わらないですね。

   

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成功は成功のもと

   

天才とは何だろうと時おり考える。

130年ほど前、トーマス・エジソンが白熱電球を開発したときに、すぐに焼き切れるフィラメントを改良しようと6000種類とも言われる材料を試した。「天才とは1%のひらめきと99%の努力」とはエジソンの言葉である。

有機ELは石油から作り出した新しい有機物の発光体を電気で光らせる発光素子であり、これまで効率や耐久性の向上に世界中で数千もの材料が試されたと思う。山形大学においても20年前に有機ELの研究を始め、たぶん数百は試しただろう。

まず、新しい発光材料を「設計」し、苦労して「合成」し、有機EL素子を作って「光らせる」のである。合成した新物質が必ずしも期待したような性能が示す訳ではない。むしろ、期待はずれの方が多い。

だから、科学を専門としない一般の人たちは、発明というのは99回の失敗の後にやって来るたった1回の成功と思うかもしれない。

 

でも、考えてみてほしい。

新物質を設計するにも設計指針がある。それまでの多くの失敗や成功の経験を生かして方針を立てるのである。だから、失敗してもそれは次の実験に生かされ、徐々にあたる精度が高くなる。だから、科学の実験においては失敗とは、単に予想が外れただけであり、それがその後、生きてくることを考えると「失敗」でさえ新たな知見を手に入れた「成功」なのである。

 

人というのは面白い。

ポジティブに考える人、ネガティブに考える人、様々である。科学者というのはそういう意味でポジティブでなければやっていけないし、たぶんそのような人が科学の道に進むのであろう。99回の失敗を繰り返しても、それを成功ととらえる。だから「成功は成功のもと」なのである。

  

人生でも同じこと。

たとえば、大学受験に失敗して第二志望の大学に進学する。あるいは就職して社会に出る。これを失敗としてとらえるとその後の人生みじめである。たとえば、この大学に来たのは何か理由があるはずだ、と懸命にそれを探す。ここでしかできないことは何だろう、と考え、努力して能力を伸ばす。

長い人生、挫折と思えることがだれでも一度や二度は経験すると思う。 それで人生を投げてしまうのか、 あるいはそれをきっかけに考え方を変え新たな生き方を見つけて成功するのか、結局は考え方次第である。

  

じゃあ、大きな成功を収めるにはどうしたらいいのか。

筆者は高校まで成績は必ずしもいい方ではなかった。どんな教科でもクラスで一番なんてなったことはない。けど、高三の時きびしい教師に叱られるのが嫌で、英語をとことん勉強した。そしたら学年で一番になり、それが自信になった。入試も「やればできる」と信じて目標を高く持ち、突破できた。大学院への進学の際、指導教授からアメリカに行かないかと進められた時、二つ返事でYesと言った。英語などからっきしできないし、麻雀に明け暮れ、競技スキーに熱中し専門知識も乏しい典型的なダメ学生なのにである。これも、「やればできる」を経験しているので、本気でやれば博士号を取得することもできると思ったからである。高三のあのころに将来アメリカに留学して博士を取って来いと言われても、そんな自信はなかった。

 

20年前に山形大工学部に助手として奉職した。

実験器具も満足になかった当時の研究室でも腐ることなく、自分に出来ることを精一杯やってきた。

有機ELというまったく経験のない新しい分野に賭けることも躊躇しなかった。もちろん最初は作った素子は光らない。けど、実験を重ね、それがわずかでも光を放つと興奮した。自分の考えを試した。より明るく光った。あるとき、白く光る素子ができた。世界でたった一つの白い光を見た時は、これで世界が変わると思った。現在の照明にまで使えるくらい明るく効率の高い白色有機ELパネルは、小さな成功から始まってようやくたどり着いた成果である。成功体験を積み重ね、自信を得ながらより高い目標にチャレンジしてきた結果なのだ。

 

成功は成功のもと。

ポジティブに考えて、成功体験を積み自信をつける。それが人として大きくなれる秘訣だと思うし、高い目標にたどり着ける唯一の方法だと信ずる。そんな経験を学生や、時には中学や高校で話しながら、一人の父親として小学校に通う娘を育てている。研究者として、教員として、父親として、夫として、まだまだ頂上は見えない。

 

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人生とは、神から与えられたミッションが何かを探す旅。

終わりがありません。

  

    

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