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2008年5月 9日 (金)

教授移籍の条件

  
 
本日、無事予定どおりの帰国。
シカゴでの乗り継ぎも問題なく、寝てるうちに成田に到着した。
今回は主催者がビジネスクラスを準備してくれたので有り難かった。
 
 
 
きのうの続きになるけど、大学教授がどんな時に大学を移るのかちょっと考えてみたい。
 
というのも、
アリゾナ大からジョージアテックに来られたSeth Marder教授や、会議に参加されてた旧知のプリンストン大学のAntoine Kahn教授らと大学教授の移籍についてあれやこれや話を聞いたのだ。
 
大学教授の移籍というのは日本やヨーロッパでは珍しいことだけど、アメリカではよく見られる。
この場合、准教授が教授の席を求めて大学を移ると言うのではなくて、教授が教授として他大学に移ることで、日本では教授が地方大から旧帝大への移籍はよくあるけど、地方大学への移籍や地方大学間での移籍は日本では「極めて希」である。
 
では、アメリカでは教授たちがどのような場合に、移籍するかと言うと、
基本的には、自分を高く買ってくれるところに移るのである。
ようするに、企業でもより良い条件を求めて転職するのが日本でも増えてるけど、アメリカでは昔からそうだし、大学でも移動は当たりなのだ。
特に最近では、大学が生き残りをかけて特定の研究分野を重点化して人材を集めて、研究開発センターのような物を構築して、大学の知名度をあげたり、国の予算を獲得しようと積極的に動いている。
 
アメリカの大学では、日本のように公務員的に号俸が毎年一つあがることではない。給与に関しては実績をベースに交渉できる。
だから、移動する際には、給料とスペースだけではなく、スタートアップの研究費も重要であって、研究室の立ち上げに必要な装置類の購入に必要な予算も交渉の対象になる。
個々の教授によって条件は異なり、それが具体的にいくらかというのはその人の能力、実績次第と言うところか。
 
 
この3つがクリアされて教授は真剣に移籍の検討にはいる。
 
というのも、
大学のロケーションや学生の質、学科内の教授メンバー、住居環境なども重要な因子であり、単身赴任という考えのないアメリカでは、家族があれば家族メンバー全員の同意が不可欠だからだ。
 
したがって、大学の場所が最終的な判断材料になることもあり、その地域に魅力がない場合は、給与やスペースなどのインセンティブを高めに設定しなければスター教授は招けない。
 
 
ジョージアテックへの大移動に関しては、この大学が有機半導体分野に力を入れようとしていたこと、アリゾナ大での活動が必ずしもかれらの条件にあってなかったことなどあって、教授4人、ポスドクスタッフ、学生など40人の受け入れを認めさせ、教授たちの給料や十分な研究スペースなど、満足の行く条件を提示されての大移動成立となった。
 
もちろん、このグループは大学の評価を高め、外部資金も潤沢に獲得するので、大学側としては収入も増えて、win-winの関係となっている。
 
逆に、アリゾナ大ではスッポリと有機半導体のグループが抜けたので、このホットな分野で一気に取り残されることになったし、外部資金獲得額の高い教授たちや優秀な学生までゴソッとがジョージアテックに集ることになってしまった。
 
 
話は前後するけど、
いまから10年ほど前にアリゾナ大のある教授のところを訪ねた時に、カリフォルニアのある大学から引きがあって、スタッフの席も含めて移籍に関して考えておられた。
カリフォルニアの大学からは教授の要求を全面的に受け入れたらしいけど、アリゾナ大から強力な引き止めがあって結局は残られた。
 
別の見方をすると、
他大学からの引き抜きを利用して交渉し、アリゾナ大での給与やスペースなどの活動条件を大幅にアップさせることに成功し、地位を不動のものとされた。
 
野球やフットボールと一緒で、大学でもスター教授の引き止めには金がかかるのである。
しかし、スター教授は大学のステータスをあげてくれるし、潤沢な外部資金を確保してくれて大学の収入が増える。
 
だから、金をかけても元が取れるのである。
 
 
こうやって考えると、日本の大学は考え方がどこまでも生ぬるくて、とくに地方大学では旧帝大に引き抜かれまくるし、大学側も為す術がない。
  
 
では、どうしたらいいのか、明日、つづきを書いてみたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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