エプソンの有機EL
日経新聞の1面に「セイコーエプソンが有機ELに参入」と、でていた。
長野県富士見町の事業所内に専用製造ラインを建設、年内にも「受注生産」を始めるという。生産規模は年間数千枚。まず、8インチの業務用モニターを生産する。最大21インチまで生産できる、らしい。
有機ELの製品寿命はこれまで約3万時間が限界とされてきたが、同社は材料や構造の見直しで2倍近い5万時間以上を可能にした、とのこと。
セイコーエプソンでは、10年以上前から高分子材料をインクジェット印刷で成膜する技術を開発していた。これまで、2インチの小型から40インチの大型ディスプレーを試作して発表していた。また、昨年は住友化学と共同でレーザープリンターなどのプリントヘッドを有機ELで試作していたが、事業化を正式に発表したことはなかった。
昨年解散した有機EL専業メーカーのサンヨーコダックディスプレイ(SKD)は、当時サンヨーエプソンイメージングデバイス(現在のエプソンイメージングデバイス)から低温ポリシリコンTFT基板を調達していたので、エプソンはTFT基板に関しては、すでに量産技術を有している。
問題は、有機ELの特性および成膜技術で、特にエプソンが注力している高分子(ポリマー)タイプは、すでに有機ELの事業化をすすめているソニーや東北パイオニアなどが用いる低分子とは異なる。
高分子タイプは、寿命(輝度半減時間)が低分子に比べて短かったので、それがようやく5万時間程度に伸びたということなのか。
しかし、5万時間というのも、一般的に研究室で用いられる2ミリ角の素子の寿命なのか、あるいは実際のディスプレイパネルでの寿命なのか。点灯率30%での寿命なのか。発光色は何色で、初期輝度はいくらか、などの発表がないので、真の実力のほどがわからない。
ちなみに、低分子を用いた素子では、研究室レベルではマルチフォトン素子構造で、発光色にもよるが、輝度1000カンデラでは寿命数十万時間を達成している。
コスト面でも、高分子有機ELの量産は、赤、緑、青のサブピクセルの形成にインクジェットが用いられようとしているが、インクジェットのスピード、ノズルのつまり、タクトタイムの短縮、塗布膜のベーキング時間の短縮、など課題は多く、量産技術が確立したとは言えない状況で、低分子系よりも低いとは言えないのである。
また、生産量にしても年間数千枚は、量産とは呼べずサンプル出荷レベル。
事業としては成り立たない。
今後、ディスプレイ事業が不振のセイコーエプソンが、どこまで本気で有機ELに投資できるのだろうか。
一方、隣国では、サムスンSDIやLGフィリップスLCDなどの大手が本格的な量産を開始する。NIKKEI NETによると、サムスンSDIは天安事業場(忠清南道天安市)に4775億ウォン(610億円)を投じて量産ラインを建設した。生産能力は月150万枚(2インチ換算)で、来年は同300万枚と2倍に引き上げる計画。
とにかく、今回のエプソンの発表は、日経の1面を飾るほどのニュースではなさそうである。
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