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Vテク子会社、米沢進出へ 有機ELの主導権再び
ディスプレー製造装置大手のブイ・テクノロジー(Vテク、横浜市、杉本重人社長)の子会社が米沢市に進出することが決まった。有機ELディスプレーの生産に必要な「次世代蒸着マスク」を量産するほか、有機ELの照明パネルメーカー「ルミオテック」(米沢市)も近く子会社化し、有機ELのディスプレー、照明両分野で事業展開する。このところ停滞気味だった米沢の有機EL関連事業を再加速させる起爆剤として期待したい。
米沢に進出するのは昨年12月に設立されたブイ・イー・ティー(横浜市、長野勝一社長)。米沢八幡原中核工業団地にあり、ルミオテックも入居する県産業技術振興機構の「有機エレクトロニクス事業化実証施設」を活用し、約50億円を投じて生産ラインを開設、4月の着工、10月の稼働を見込んでいる。Vテクの杉本社長は元々技術者で、数年前には山形大工学部の社会人博士課程で博士号を取得したという縁もあるという。
蒸着マスクとは、蒸発させた有機EL発光材料をガラス基板に付着させる際に使うフィルム状の部品。従来品は金属製のため、高温の蒸着装置内では熱膨張したり、サイズが大きくなると自重でゆがみ基盤との間に隙間ができたりといった問題があった。Vテクが特許を持つ次世代マスクは、耐熱性の樹脂と金属のハイブリッドで軽く、膨張しにくいため、特別な技術を持たなくても製品の歩留まりを上げやすいのが特長だ。
Vテク誘致に大きな役割を果たした山形大有機材料システムフロンティアセンターの城戸淳二卓越研究教授によると、蒸着マスクの生産以上に大きな意味があるのは、ルミオテックの子会社化なのだという。ルミオテックは2008年、三菱重工業など4社と城戸教授が共同で設立した会社で、11年に世界初の有機EL照明パネル生産を開始した。しかし生産ラインは小規模なままでパネルの価格も高止まりの状態が続き、普及への足かせになってきた。
Vテクは蒸着マスクだけでなく、蒸着装置も米沢で製造する方針で、ルミオテックが持つ最先端の真空蒸着技術は大いに役立つ。自社製の蒸着装置があれば大型ラインの導入も容易だろう。さらに米沢にはパネルの性能を左右する有機材料に関しても、最先端の研究をしている山形大や大学発ベンチャーがある。「ルミオテックが大手ディスプレーメーカーと協業で最先端有機ELディスプレーを試作し、技術確立後は装置と技術、材料をセットで販売する―という形を取れば、投資額も少なくて済むし、米沢は常に最先端技術の集積地として存在感を発揮できる」と城戸教授は語る。
さらに「有機ELのディスプレーも白色照明も、製造ラインは同じ。同じ大型ラインでディスプレーだけでなく照明パネルも作れば、価格は現在の10分の1~20分の1に下がる」とも。有機EL照明の最大のネックが解消されれば、一気に普及モードに入ると期待される。
有機ELに関しては、日本が開発した技術で韓国勢が実利を取る、という状況が続いてきた。Vテクの米沢進出を日本、そして本県が再び主導権を握るための大きな転機としたい。
(2018/02/27付)
日経2月17日。
またまたブイテクノロジー。
山形大学発ベンチャー企業であるナチュラルプロセスファクトリー(株)。
ナチュラルドライヤーという熱を加えずに乾燥する常温乾燥機を開発して販売しています。
その乾燥機を用いて乾燥した鶴岡のだだちゃ豆。
その粉を使ってできたのが、鶴岡木村屋の「だだちゃ豆右衛門シリーズ」。
2016年3月から発売し始め、販売を始めて2ヶ月で85000個売れたという伝説を生み出し、今や鶴岡どころか山形を代表するお菓子になりました。
箱を開けた瞬間、あのだだちゃ豆の香り、
ダイエット中のこの私が、それを忘れて写真の半分はぺろっといただいてしまいましたから。
実は農家では傷物や形の悪いものなどの規格外品を廃棄しています。
豊作過ぎても価格安定化のために捨ててしまいます。
私たちの考えに賛同していただけるエンジェルやベンチャーキャピタル、企業経営者の皆様、ご連絡ください。
まずお読みください。
日経東北版から:
Vテク、山形県米沢市に有機EL用マスク生産工場
2018/2/6 22:00
東証1部上場のブイ・テクノロジーが山形県米沢市に進出する。6日、杉本重人社長が吉村美栄子山形県知事らと県庁で記者会見し発表した。スマートフォン(スマホ)に使われる有機EL生産に必要な次世代蒸着マスクなどを量産する。またVテクが有機EL照明のルミオテック(山形県米沢市)を4月に三菱重工業から譲り受けて子会社化することも発表した。
Vテクは、1997年創業のフラット・パネル・ディスプレー(FPD)製造装置メーカー。2017年12月に設立した子会社のブイ・イー・ティー(VET)が米沢に進出する。
米沢八幡原中核工業団地に立地、ルミオテックの工場と隣接する空き工場を合わせ建物面積6000平方メートルの工場に、生産に必要な設備を導入する。4月に着工、8月に完成させて、10月からサンプル出荷を始める予定。20年度に160億円の売り上げを目指す。設備投資額は約50億円で、操業開始時20人を雇用する予定。
Vテクは米沢への工場進出で、新たに有機EL用蒸着マスクや蒸着装置製造に参入する。iPhone向け有機ELは、韓国サムスンが独占供給しているが供給能力が限られている。一方、Vテクはサムスンより高精細で製造が容易な次世代蒸着マスクを開発済み。
工場本格稼働時には蒸着マスクを月産300枚を見込む。iPhone生産量の25%に相当する有機ELが生産できる規模という。
米沢進出は、有機ELの第一人者、城戸淳二・山形大学教授が橋渡しした。記者会見した杉本社長は「米沢は有機EL発祥の地。サムスンの高精細化は足踏みしており、特許技術でその限界を打ち破る」と話した。
ということで、よくわかったようなわからないような。
で、
解説します。
今回の発表は、よく読むと二つの重大ニュースが含まれています。
きょうはまず、蒸着マスク工場進出の話。
蒸着マスクというのは有機ELディスプレイを製造する時に必要は部品。
スマホなどのディスプレイには、赤、緑、青の発光点が配置されてます。そのひと組を画素と言いますが、5インチの画面なら100万個以上の画素が並んでます。
その画素の形成は、とても薄い金属のシート状の薄い板に細かい穴が空いていて(蒸着マスクと言います)、それを通して有機色素を蒸発させてその部分だけに発光点を形成します。
ですから、蒸着マスクには無数の細かい穴が空いていて、穴の位置に青や緑、赤の色素を少なくとも3回成膜するのです。
近年、ディスプレイの精細度がどんどん上がり、画素密度400ppiは当たり前、ppiというのはピクセル パー インチ。すなわち、1インチ(2.54cm)に400もの赤、緑、青から構成される画素があるとうことです。ですから、画素のピッチが0.064ミリ(64ミクロン)というからとてつもなく細かいことがわかります。
ですから、ディスプレイ製造時には、例えばガラス基板上の所定の位置にマスクを合わせる訳ですが、その位置合わせ精度がミクロン単位でとても繊細なんです。
特に蒸着時にはルツボを加熱して有機色素を蒸発させるので、その輻射熱で金属マスクが膨張したり、マスクが大きくなると自重で基板との隙間が空いたりと、現場の職人技と経験で製造時の歩留まりをあげています。
サムスンも数年かかって、この技術を確立しました。
で、今。
中国でも有機ELの製造ラインが立ち上がりつつあります。
けど、
職人いないです。
技術ないです。
装置を買ってきて、
材料を買ってきて、
すぐに作り始めたいんだけど、
それができません。
その理由の一つが、蒸着マスク。
今回のVテクノロジーのマスクは、
従来の蒸着マスクと違い、
ポリイミドという耐熱性の樹脂と、金属のハイブリッド。
だから、
軽い、
熱で膨張しにくい、
だから、
使いやすい。
そ んな技術をコツコツと開発しました。
基本的にVテクはファブレスです。
技術を開発して、設計して、
協力会社さんに製造してもらって、
売る。
けど、
今回は違います。
自社でマスクを製造販売します。
それくらい、
自身のある技術なんです。
近い将来、蒸着マスク市場は1000億に。
そのうち、20%を取れれば200億。
50%で500億。
そんな製品をここ米沢で製造するって、
直接的、間接的にも米沢、山形にとってメリットは大きいですね。
報道では城戸が橋渡ししたとなってますが、
実はVテクの杉本社長は山形大で社会人博士課程を修了した工学博士です。
TFT基板を簡便に、低コストで製造できる技術で博士論文をまとめられました。
もともと防衛大では機械工学の専門で機械設計のプロ。
技術者であり経営者、
だから即断即決、とにかく目利きができる経営者なんですね。
当研究室ともTFT基板の新規製造方法の共同研究を行ってますし、山形大のイノベーションセンターで有機ELの重要技術の開発を共同で行ってる山形大の信者でもあります。
その社長が、蒸着マスク製造を米沢で行うと決断したのは、まあ、自然な流れです。
これで、米沢には
材料研究、デバイス開発、パネル試作、照明用パネル製造(ルミオテック)
、小型ディスプレイ製造(東北パイオニア)、そして製造装置メーカーと有機EL関連の技術開発から製造まで、全て揃うことになります。
こんな地域は世界でここだけなんです。
あとは、ベンチャーを成功させて、
夢のある地域としてのブランドを確立して、若者が集まる地域にするだけです。
有機エレクトロニクスバレーも仕上げのフェーズに入りましたね。
明日は、重大ニュースその2のルミオテックの解説をいたします。
お楽しみに。
きょうは博士論文公聴会が二件ありました。
一件目が、小松くん。
彼は随分前に、私が仙台の予備校に講演に行った時に話を聞いていて、学部は北海道大に進学したものの、大学院はうちの研究室に来ました。
しかも、リーディング大学院のプログラム一期生で、修士博士を5年一貫で博士をめざし、約半年間のドイツのドレスデン工科大学への留学(遊学?)も体験しました。
ですから、初めて知り合った時から数えると10年くらい経つのでしょうか。
口頭発表は英語で45分、
質疑応答が1時間10分くらい、
全体で2時間弱。
まあ、なんとか、こなして、
あとは博士論文に手直しして提出するだけです。
実は、英語での公聴会の発表は彼が初めてです。
ですから、私も英語で質問しました。
よくぞここまで成長してくれたと、口では厳しいことを言いながらも心の中ではちょっと嬉しかったです。
とは言うものの、まだまだヒヨッコです。
4月以降は九州大学で博士研究員としてお世話になりますが、ビシバシ鍛えていただければと思います。
二件目が片桐さん。
山形大で准教授として勤められた中山健一先生の学生さんで、私は本来副査です。
中山先生が教授として大阪大学に転出されたので、書類上は私が主査になってます。
片桐さんも、リーディングの一期生で、UCLAに留学され、非常に積極的に活動されました。
親しい受け入れ先の教授から、「チホは日本人じゃないみたい。」と言わしめましたほどの行動力です。
彼女は新しい有機半導体の測定方法に取り組み、素晴らしい成果を挙げました。
4月から理化学研究所で博士研究員として活動すると言うことなので、研究者としてこれからの活躍を期待しています。
先日のテレビ番組で林修先生が、「スゲエな山形大学!」と驚かれたのは、こう言うモチベーションの高い学生が多いからです。
それと研究に集中できる環境の良さ、指導教授陣の質の高さ(?)でしょうか。
明日の朝ももう一件、公聴会が続きます。
楽しみです。