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2017年7月24日 (月)

教育とは

 
 

 
 
 
山形の教育関係者に配布されてるそうです。
そこに、投稿して欲しいとの依頼があって、思うまま筆を走らせました。
というか、
キーボードを叩きました。
 
 
 
 
 
 

山形教育 380号

 

山形から突然変異を生み出せ

 

 

14年前、ノーベル物理学賞を受賞された中村修二教授と共著で「突然変異を生み出せ」という本を出版しました。実は、私も中村教授もアメリカでの留学体験により、あたかも突然変異を起こしたかのように生まれ変わり、その後の人生が大きく変わりました。なぜ、日本の学校教育でそれができないのか、それを議論した内容です。

私自身、小、中、高校と勉強嫌いで成績は芳しくなく、大学でもバイトとサークル活動にあけくれていました。しかし、大学院をニューヨークで過ごし、その5年間で最先端研究のおもしろさ、すごさ、厳しさ、そしてアメリカンドリームを目の当たりにすることにより、とんがった研究者として目覚めました。

そして、山形に来て29年。特に最近では日本の科学技術レベルが下がっていることが指摘され、そのうえ少子化が進行しており、この国の将来を心配しています。科学技術立国として栄え続ける唯一の解決法は、イノベーターと呼ばれる革新的な技術を生み出す人たちを増やすことだと思います。これまで、100人にひとりイノベーターが生まれていたとすると、その数を3人、4人と増やすことができれば、これまで以上に新産業の創出につながります。

では、それができていないこの国の学校教育において何が問題なのでしょうか。

戦後であれば、貧しくて、そこから抜け出すのに必死に努力しました。それが、今の子供達はというと、世界で最も平和な国で、ネットで見たいものを見て、買いたいものを買って、何不自由ない生活です。高校受験、大学受験も塾や予備校、通信教育など手取り足取りです。学校でも進路指導の先生が、生徒の偏差値によって進学先をアドバイスしてくれます。ですから、ハングリーな若者、大志を抱く少年少女が極めて少なくなってきているのです。一方、親や先生に叱られたことのない子供達も増え、精神面でひ弱になっています。大学でも引きこもる学生の割合が増えています。

どうすればこのような環境で、世界をリードできるイノベーター、グローバルリーダーを生み出すことができるのでしょうか?

それは、刺激を与え続けることだと思っています。

まず、家庭では親が子供と対話すること。学校やテレビでは聞けない話、実社会で起こっていること、仕事のこと、地域のこと、政治のこと、とにかく常に対話して、子供に考えさせ、脳を活性化すること。そうすることによって、子供達は好奇心を抱き、本を読んだり、実験したり、探検したり、新しいことにチャレンジするようになるでしょう。

私事ですが、うちには大学生の娘がひとりいます。米沢という人口が9万にも満たない街で、いかに育てるのか、実験してきました。ゲームは禁止、読み書きソロバンのうち、ソロバン塾には小学校2年生から通わせ、中学では二段になりました。集中力が養われたのはソロバンのおかげと考えています。小学校低学年の頃から、本屋で好きな本を買い与えました。最初はオバケの本ばかりでしたが、高校の頃には私の買ってきた小説を読むようになりました。これは読書の習慣をつけるのが狙いです。言葉と一緒で、本を読みまくることにより、良い文章が書けるようになります。また、英検も高校一年で準一級です。文武両道と言いますが、中学から剣道を始め、高校では三段になりました。そして、大学受験の時には進学塾にも通わず、通信教育も受けず、単に高校から出された課題をこなすだけで、現役で京都大学工学部に合格しました。

私は彼女を見ていて、「常に刺激を与え続ける」という教育方法が正しいものであると確信しました。

幸い、私自身の職業が大学教授であることから、研究の話、科学技術の話、大学の先生という職業について、もちろん普段はバカ話がほとんどですが、折に触れ娘には話していたと思います。それが彼女の好奇心に火をつけたので、理系に進学したのでしょう。

では、学校の先生ができることはなんでしょうか?

私は研究室で学生を預かる身として、心がけていることがあります。

それは、学生に知らない世界を見せてあげるということです。

最先端科学というもの、世界というもの、実社会というものを学生たちは知りません。特に、教科書で学んだ理科や科学とは全く異なるのが最先端の研究です。その研究を通して、科学のおもしろさ、素晴らしさを体験することで、目覚めます。特に、外国での国際会議で発表したり、短期、長期で外国の研究機関に滞在することで、彼ら彼女らは大いなる刺激を受けることになります。

また、すでに十数年になりますが、大学で中学生や高校生向けの実験教室を開催しています。そこで刺激を受けたモチベーションの高い学生が研究室に集まるようになりました。鉄は熱いうちに打てと言いますが、このような地道なアウトリーチ活動が極めて有効であると実感しています。

山形から数多くの突然変異を生み出し、日本をふたたび日の出ずる国、科学技術立国にしたいと思います。

 

 

略歴

城戸淳二(きどじゅんじ)

山形大学大学院 卓越研究教授

 

1959年大阪府東大阪市生まれ。1984年早稲田大学理工学部応用化学科卒業、1989年ニューヨークポリテクニック大学大学院にてPh.D.修了、1989年より山形大学、現在に至る。

 

受賞歴

平成2511月  紫綬褒章

 

主な著書

「突然変異を生み出せ」中村修二・城戸淳二共著 2003年 日本実業出版社 

「日本のエジソン城戸淳二の発想〜成功は成功を呼ぶ〜」2004KKベストセラーズ

「学者になるか、起業家になるか」坂本桂一・城戸淳二共著 2011年 PHP新書

「大学教授が考えた1年で90を切れるゴルフ上達法!」2012年 角川SSC新書

 

 

 

 

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